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2014年3月13日木曜日

企業破綻に見るモラルハザードと経営再建への道筋


山桜イブニングセミナーは、単会が独自で主催するセミナーです。今回の講師は、鎌倫広報委員長 平松 健男 氏です。

【講師のプロフィール】
1941年生まれ。三菱自動車工業(株)で、車の駆動系の開発に従事し、積極的に新たなメカニズムを開発、大きな失敗もしたが、それを挽回すべく幾多の先導的技術を開発した。クレーム隠しという企業の危機にも直面し、苦労した経験を持つ。




会場は、由比ヶ浜公会堂。午後6時半に7名の出席を得て、セミナーが始まりました。途中から、皆川副会長の手料理(感謝!)に舌鼓を打ちながら続行し、楽しいひと時を過ごしました。
冒頭、講師から簡単な自己紹介があり、自動車会社での開発や大学での教鞭の経験を元に、人材をどのように教育・育成するべきか、そして、多くの企業が陥る経営破綻の危機の真相は何だったのかについて、講師の見解が話されました。










話題となる企業ごとに簡単にまとめると、以下の通りです。


三菱自動車:2000年ごろ、トラックのクレーム隠しが発覚、乗用車でも次々と品質面の不具合が発生、その本質的な原因は、以下と考えられます。
カーメーカと販売店を含む関連企業の利益を確保するため、開発能力をはるかに上回る量の新規開発車種とその開発の短期化が同時に実施されました。開発人員はむしろ減少気味でしたので、開発能力は決定的に不足し、市場でどのような不具合が発生しているかについてさえ、読み解く時間が無い状況でした。しかも、その実情が本社の幹部には届かず、イエスマンを強要され、無謀な開発、悪い話は隠蔽(特に、役員人事の時期には一層拍車がかかった)され、状況を知った前途有望な社員が次々と辞めたことなどにより、負のスパイラルから抜け出せなくなったことで破綻状態になりました。


雪印乳業:集団食中毒事件(停電により工場の牛乳が高温で長時間おかれ、ぶどう状球菌が繁殖、加熱殺菌したものの、毒素は消えず、1.5万人以上が罹患。さらに国内の狂牛病発生に絡み、国内牛を農水省が買い取ることになったとき、低価の外国牛を国産牛と偽り、高価で水産省に買い取らせていたことが内部告発で発覚。二つの不祥事で、グループは決定的打撃を受けました。


JAL:運行効率の低い大型機の多数保有、採算性の悪いホテルなどへの過度の投資、採算性の悪い地方空港への展開(政治がらみが多い)、年金を含む高い人件費、労組との対立などにより破綻。稲盛氏を迎えるとともに、政治的な配慮もあって再建に成功。しかし、今後を注視しなくてはいけません。


東電福島第一原発:今回の事故の真因を想定外による津波とし、真実が捻じ曲げられているように思います。元々、設計や開発に関わっていない現場の技術者では、訓練をしない限り、いざと言うときに正しくは対応できません。今回、電源が完全に失われても、しばらくの間原子炉を冷却できる緊急冷却システムを保有していたにも拘らず、その操作ができなかったことで、問題を深刻化してしまったと思います。安全神話を信じた結果、訓練を省略してこのような事故を起こし、緊急時の正しい対応ができませんでした。その後の対応にも不信感を残しています。また、廃炉するにも、未熟労働者の集合体では、事故は絶えないことでしょう。


JR北海道:旧式ディーゼル車の車両火災、レール幅データの改ざん、社長経験者2人の自殺と、不祥事が続きました。
他のJRに比べ、貧乏くじを引いて独立したJR北海道ですが、相談役を迎えに行くのに、秘書付き社有車ということと、人手不足で困り果てている現場作業員の実情とは、あまりにもアンマッチです。
報酬を辞退してJALを改革した稲盛氏、バス通勤を通し、夕食はめざしと味噌汁で過ごし、余ったお金は大学に全額寄付した土光氏(戦後の石川島、東芝を再建)を見習うべきだと思います。


JALの理念の第一番には、社員の幸福が謳ってあります。稲盛氏の思いがこもっている会社理念だと思います。その他の会社の殆どでは、第一の理念が「お客様第一」です。会社が社員の幸福を願えば、社員は、必然的にお客様を大切にするでしょう。であれば、社員の幸福を第一番に持ってくるのが自然です。
また、社員がやる気を出し、退職するときに「いい会社だった」と思える会社、協力会社も好きになってくれる会社とするには、以下のことも大切だと思います。
①10年、20年後の繁栄を予測できる理念が必要で、かつ、その理念に向かう歩みが具体的でなくてはいけません。
②若手社員を技術教育するとき、既存技術を教えるのではなく、新たな技術を開発するための基礎理論や課題をとことん考えて貰い、実際に解決してもらうこと
  既存技術とは、真似の技術で、戦後の日本や現在の中国・韓国はそれで伸びてきましたが、いつになっても先頭には立てません
③開発品に不具合があれば、迷惑をかけているお客様のことを思い、最優先で不具合解消に取り組むこと
④外国には親切に教えてあげること。しかし、更なる卓越した技術を磨き、自信を持つこと

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