2014年1月30日木曜日


131日(金)


農薬入り冷凍食品事件と倫理


マルハニチロの子会社における冷凍食品に農薬が入れられた事件は、犯人の自供により、一段落しました。

工場側は、故意の異物混入を防止するために、製造ラインに各種の対策を盛り込んでいたのですが、犯人はそれをかいくぐって、農薬を混入させました。

社員は悪いことをするものだという前提(性悪説)を採るか、悪いことはしないという前提(性善説)を採るかで、工場の設備、管理、人事、会社の雰囲気などは全く異なってきます。

今回の事件は、性悪説を採っていたにも拘らず、その対応の不完全さに足をすくわれた形になりました。

日本の製造工場では、古くから社員間の格差を恨み、この種事件が頻発しました。今回も、契約社員という不安定な雇用形態と低賃金、将来に対する失望感によって、犯行を決意したということのようです。

どのような境遇であろうと、社員の一人として、不特定多数のお客様に大きな不安を与えたり、実際に不愉快な思いをさせることは許せません。ただ、日本の製造業が新興国に拠点を移す中で、低コストを追い続ければ、このような問題点が浮き上がってくることは予測できました。

 
最近の会社幹部の倫理感の欠如、社員側の最低限の道徳感の欠如は、目に余るものがあります。このまま放っておけば、会社側は、悪徳社員の悪徳行為を防止するためだけで、製品のコスト競争力を失っていくことでしょう。

東日本大震災で、大きな被害を受けたばかりの日本人が互いに助け合っている姿を見て、世界は、日本人を見直しました。それを聴いて、日本人は美しい日本を見直したものです。しかし、そのような感動に浸っている傍から、今回のような事件が発生しています。

 
阪急電鉄の創業者小林一三さんは、お客様を信じるとして、社内検札をしないことを決め、現在に到っています。阪急に乗っているお客さんは、その一三さんの精神を汲み取って、いわゆるキセル乗車をする人が極めて少ないとのことです。

性善説を採ることによって、無駄な出費は減り、社内の雰囲気は改善され、京阪神の人たちは、暗黙裡に、阪急の乗客はハイクラスであると評価しています。一三さんの倫理観溢れる言動が、阪急の好ましい伝統を長続きさせているのだと思います。

文責:平松健男 広報委員長

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